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【活動報告/第2回特別ワークショップ】
 
第2回特別ワークショップが下記の通り名古屋にて行われました。
地元の愛知/東海地方をはじめ、遠くは関西方面、鹿児島県や栃木県からの参加者もいらっしゃいました。募集人数を超える方にお集まりいただき有意義なワークでした。      

     *日時:平成18年9月3日(日) 10:00〜17:00
     *場所:スズケン本社2階会議室
     *テーマ:気付きリストとクラスタリングシート
 
       プログラム       
  1.  開会の挨拶
  2.  実行委員挨拶
  3.  岡村会頭 講義 「POSの本質を理解しよう」

  4. 《    昼食 (12:00〜13:00)  》
  5.  ワークショップ
  6.  グループ発表/講師コメント
     


《活動報告詳細》

午前中は、開会の挨拶及び実行委員の挨拶の後、講師より 「POSの本質を理解しよう」 と題して講義がありました

「POSの本質を理解しよう」  (要約)  
服薬ケア研究所 所長 岡村祐聡

POSとは、時間軸に関係なく問題点ごとに考え、問題点ごとに得られた情報をクラスタリングして解決を目指していく考え方です。

患者さんの訴えは、あくまで患者さんにとってのstoryであり、問題点の解決のために必要な情報がすべて漏れなく表れて来るわけではありません。そのため、専門家である薬剤師が気付いた問題点を明確にして、最適な解決方法を見つけるためには、こちらから追加の質問をし、足りない情報を補足してから、適切な判断をする必要があります。このとき最も大切なのが、POSにおけるSOAP分析の考え方なのです。

このような思考手順を踏むには、最初に「あれっ?」と感じることがすべてのスタートになるのですが、その「気付く力」を養い、その考え方を学ぶのが、本日ワークを行う「気付きリスト」と「クラスタリングシート」です。

「気付く力」をつけるために何より大切なことは、ブロッキングを避ける事なのですが、この「気付きリスト」や「クラスタリングシート」を用いて、いろいろ思考を重ねていくと、ブロッキングがはずれ、自分でもびっくりするほど様々な事に「気付ける」ようになると思います。ぜひ、そんな体験をたくさんしていただき、「気付く力」を付けていただきたいと思います。


講義の詳細は会員のページでご覧いただけます。



午後からは ワークショップ です。
4グループに別れてディスカッションを行いました。
まず模擬症例を使ってクラスタリングしました。 その中からピックアップした気付きをクラスタリングシートに記入した後、議論を展開させていきました.

参考:<グループワークの進め方>
1・「模擬症例」をよく読んでだくさい。

提示された薬歴を読み、それぞれの記述の中で「何か気になること(患者さんに聞いて確かめてみたいこと)」を出来る限りピックアップして、それを「気付きリスト」に記入してください。

2・グループのメンバーで気づきを持ち寄ってください。

3・気付きの中で、共通するテーマをまとめてください。

4・「気付き」をクラスタリングシートに沿って、記入していきます。


5・今日体験したことの振り返りを全員で話し合ってください。

6・グループで出た意見を発表してください。



まず始めに模擬症例を示します。
皆さんも当日のWSに参加したつもりで、この症例をよく読み、薬歴のそれぞれの記述の中で「何か気になること(患者さんに聞いて確かめてみたいこと)」を出来る限りピックアップしてみましょう!!


*************  模擬症例  **************

60代 男性

【平成17年 8月1日】
1 ケルロング(10)  1T
  バファリン81    1T
  エースコール(4)  1T       /1日1回朝食後  28日分

2 メバロチン(5)   2T
  ガスターD(20)  2T        /1日2回朝夕食後  28日分

3 コレバイン顆粒   4.28g        /1日2回朝夕食前  28日分

4 フランドルテープS    28枚     /1日1回 寝る前


       S:時々なんとなく違和感を感じることはある
       O:4年半前に心筋梗塞の発作を起こし救急車で運ばれた経験あり
         ニトロペンの処方3月30日にあり
       A:発作予防のために
       P:違和感を感じるときには、ニトロペンを服用してください。

【平成17年 9月3日】
1〜4 Do
       S:ふわふわした感じ、というか「春眠暁を覚えず」って感じかな。
         血圧は先生からもほめられたよ。
       O:このところ、昼寝の時間がある、とのこと。
         BP 120を切るくらい。下の数値は不明
       A:眠気がある→ふわふわ感は、血圧下がりすぎによるめまいではなさそう
       P:心臓のためには、その数値は良い状態ですね

【平成17年 10月3日】
1〜4 Do
       S:フランドルテープがあまる。
       O:用法指示は寝る前
       A:眠いときに貼り忘れる可能性がある
       P:入浴後の貼付を提案

【平成17年 11月5日】
1〜4 Do  
       S:別に、変わったことはないよ
       O:処方はDo
       A/P:経過観察

【平成17年 12月20日】
1〜4 Do
       S:薬は、なるべく忘れないようにしているんだ けどねえ・・・。
       O:来局間隔は開いている
       A:コンプライアンス不良
       P:年末年始が近いので、いろいろ行事もあるかと思いますが、
         発作など起こさないためにも、薬は忘れないように注意してくださいね。

【平成18年1月10日】
1〜4 Do
       S:薬はちょっと余っているかな
       O:夜の薬が、余り傾向にある、とのこと。
       A:コレステロール数値管理のためにも、夜の服用を確実にしたい
       P:食後にこだわらず、思いついたときで良いので、必ず服用を

【平成18年2月9日】
1〜4 Do
       S:心臓発作などは起こっていない
       O:虚血性心疾患
       A:症状落ち着いているようなので
       P:発作予防になるので、薬はちゃんと飲んでくださいね。

【平成18年3月14日】
1〜3 Do
※ フランドルテープ、手持ち残あるため、処方医に照会。
  処方削除となる。

       S:フランドルテープが余る
       O:入浴後に貼り変えようと思っているけど、つい寝てしまう
       A:睡眠中の発作予防のためにも
       P:思い出したときに、必ず貼ってください

【平成18年4月11日】
1〜4 Do
       S:今日は4週間目に、ちゃんと来たよ
       O:ぴったりの間隔で来局
       A:来局間隔だけでなく、確実な服薬も意識してもらう
       P:フランドルテープや、夜の薬を忘れずに!

【平成18年5月11日】
1〜4 Do
       S:久しぶりに血液検査をしたら、コレステロールが高かった。
       O:心筋梗塞の既往歴あり
       A:数値目標をたてる
       P:心臓や血管への影響を考え、標準の数値より低めを目指しましょう。

【平成18年6月12日】
1〜4 Do
       S:1日20〜30分程度、散歩を始めたのに、太ってしまった。
       O:Drから、運動するように言われている
       A:雨の多い時期なので、結果が現れないことに水をささないように
       P:運動を始められたのは素晴らしいことですね!
         天候が不順な時期ではありますが、それで途切れてしまわないよう、
         ぜひ頑張って続けてください!

【平成18年7月13日】
1〜4 Do
       S:コレバイン以外は、ちゃんと飲んでいるよ。
       O:次回来局予定は、お盆時期
       A:休みの時期に重ならないように
       P:早めに薬、取りに来てください。

**************************************


【各グループ別発表】・・・一部抜粋
 
 [某グループ] 

★気付きリストとグループ分け★
私たちのグループでは最初に「気付き」を出し合い、後から“テーマ”にくくりました。
岡村先生からは1つ「気付き」を持ち寄るごとにグループ分けをしたほうがよいこと、各自が持っている「気付き」を出し切ったほうが後からすっきりすることをアドバイスしていただきました。
「気付き」を10個の“テーマ”に分けた段階において症例の印象は、医者とのコミュニケーションが取れていない感じがするということになりました。

挙がった気付きと、クラスタリングした結果は次の通りです。
【気づき】
≪コレバイン≫
・コレバインをどうして飲まないのか
・服用の意味はわかっているのか
≪運動≫
・運動は続いているのか
・散歩しているのに太ってしまった理由
・散歩をしている時間帯
・運動療法の意義を理解しているか
≪食事≫
・食事内容
・運動以外に食事に気をつけているか
≪違和感とニトロペン≫
・ニトロペンは使っているのか
・ニトロペンを正しく使っているか
・ニトロペンを使用した時効いたのか
・違和感の具体的な症状
・違和感を感じた時にニトロペンを使用したのか
・今までニトロペンを何回使用したか
≪ふわふわ感≫
・ふわふわ感の原因
・脈拍はどのくらいか
≪ガスターD≫
・ガスターDの処方理由
・今胃症状はどうなのか
≪フランドルテープ≫
・フランドルテープの使用状況
・フランドルテープの薬識
・フランドルテープを使わない理由
≪コンプライアンス(内服薬)≫
・コレバイン以外の残薬状況
・夜忘れる理由
・メバロチンを分2で服用する理由をDrから聞いているのか
・夜飲み忘れるのをDrに伝えているのか
≪診察状況≫
・コレステロールの具体的な数値
・受診状況
・(家庭で)血圧は測っているか
・何ヵ月ごとの血液検査を行っているか
≪患者データの更新≫
・併用薬はあるか
・副作用歴
・飲酒喫煙状況
・健康食品はとっているか
・夜お酒を飲むのか

★クラスタリングシート★
まず最初に診察状況のテーマを取り上げました。
1.≪診察状況≫
・コレステロールの具体的な数値
・受診状況
・(家庭で)血圧は測っているか
・何ヵ月ごとの血液検査を行っているか

このなかの受診状況という「気付き」についてクラスタリングシートを用いて考え始めたところ、すぐに行き詰りました。
そこでクラスタリングシートの使い方について岡村先生に説明をお願いしました。
まず、一番左に「気付き」を複数個箇条書きにするのか、それとも1つの「気付き」に対して右方向に考え、ある程度議論してから次の「気付き」に移るのかという質問に対しては、実際の業務の中では右方向に考えているのでワークでも同じように考えたほうがベターであると教えていただきました。
「気付き」の内容を受診状況など抽象的なものでなく、できるだけ具体的に書いたほうがよいことをアドバイスしていただきましたので毎月受診をしているかに変更しました。

ここに関連すると思うのですが最後のワークのまとめで、
 *「気付き」には実は階層があって、様々な階層の「気付き」が混ざっているので考えにくい。
 *「気付き」を箇条書きに縦に並べる理由は、別の「気付き」について”何故それを知りたいのか”や”展開・備考”が同じになってくることや関連付いてくることがあるから。
 *紙に書く時に行き詰るのは普段そういう思考をしていないからで、書くことによって自分の思考がわかる。
と解説がありました。

またこの“テーマ”について話し合っているうちに、 はじめは別の“テーマ”にグループ分けされていた≪患者データの更新≫は、実は一緒に考えたほうがよいのではないかということになり同じ“テーマ”にまとめることとしました。

次にフランドルテープの使用状況を取り上げました。

(中略)

次にニトロペンについて別途議論しようと思いましたが、時間切れとなりました。

★ワークを終えての感想★
・ 【気づき】 はわかっても【何故それが知りたいのか】が出てこなかった。
・ 【何故それが知りたいのか】を人にうまく伝えられない。
・ 人に【気づき】  ⇒ 【何故それが知りたいのか】の流れを伝えられない
  以上の事はSOAPでアセスメントが書けないとことにつながるのだろうということになりました。
・ これからの業務でもっと気付けるように努力したい。
・ ひとつの状況に対して複数の展開があることがわかった。日常業務に生かしたい。
・ 気付きからいきなり指導をしていることがわかった。
・ ルーチンにならずに考えながら仕事をしようと思った。


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このように、活発な議論はまだまだ続き、全部で4つのグループが発表を行いました。
後日参加者の有志数名が集まってミニ勉強会を開いたりもしています。薬剤師の仲間作りにもなっているようですよ!

服薬ケア研究会では、このような非常に充実した勉強会を、全国各地で開催しております。
ぜひ、勉強会にご参加ください。→今後の勉強会の予定
また、会員になりますと、遠くて参加できなかった例会の記録を見ることが出来ます。
ぜひ、ご入会をお待ちしております。→服薬ケア研究会について
(2007.2.1.掲載)

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